ずーっと探し求めていた答えがここにあったその2『生産性』

 伊賀泰代『生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』(ダイヤモンド社、2016年)を読みました。

前著『採用基準』に続き、大きく刺激を受けました。

 

生産性=アウトプット÷インプット

生産性とは、「成果物(アウトプット)」と「投入された資源量(インプット)」の比率として計算されます。

なので、生産性をあげようとすると、アウトプットを増やすか、インプットを減らすかの2通りの方法があります。

そしてそれぞれに「改善(インプルーブメント)」と「革新(イノベーション)」という2方向からのアプローチの仕方があるので、掛け合わせると、生産性向上のための4つのアプローチ(改善による投入資源の削減、革新による投入資源の削減…)がある、ということが具体例とともに説明されています。

 

日本の企業では生産性向上といえば、改善によるコスト削減一辺倒。

私が以前勤めていた組織では、人員削減人員削減で働く人々は疲弊していましたが、それで生産性が上がっていたかというと???だったことを思い出しました。

 

ポジションをとるということ

前著『採用基準』でも触れられていたことですが、「ポジションをとる」という考え方があります。

いずれの本でも直接的にテーマと関わる部分ではないので記述は少なめですが、でも両方の本に載っていて、私の心に深く突き刺さりました。

 

マッキンゼーでは、「自分の意見を明確にする」ことを「ポジションをとる」と呼び、全員が身につけるべきベーシックなビジネススキルだと教えられるそうです。

意思決定が必要なタイミングを迎えても、「場合による」とか「一概には言えない」「もっと調べないとわからない」「情報が足りない(ので決められない)」と言って、意思決定から逃れる人がいますが、そういう態度は許されないそうです。

 

意思決定から逃れる人、結局何も決まらない会議、あるあるですよね。

まさに自分がそうで、頭を殴られたような衝撃を受けました。

誰かが「あれはAだよね」と言うと、「でもBっていう面もあるよね」と”広い視点を持ってます私”みたいな意見は言えるんですけど、じゃあ結論は?っていうと「これは難しい問題だね〜」とか言って自分の態度を明確にできないことがよくあります。

「難しい問題」ばかりが積み上がっていって結局何も決められない。

偏りのない人間でいたい、右でもなく左でもなく中庸であることがスマートなんだと信じていましたが、この「ポジションをとる」というのを初めて理解して、社会にたくさんある課題に立ち向かっていく大人としてはこういうスキルは不可欠なんだと気づきました。

 

世の中には、「いくら情報収集をしても十分な情報が集まることはない」かつ「完璧に正しい答えは存在しない」問題がゴロゴロしています。

それらに対して「自分の意見を明確にする」練習を、ちょっとずつでも積み上げていこうと決心しました。

 

 

自分が生産性向上のためにできること

本書ではマッキンゼー流の資料の作り方、会議の進め方をはじめ、生産性をあげるために個人的にできることがたくさん紹介されています。

自分で取り入れてみよう!と思ったのは以下です。

  • ストップウォッチを使って資料作成の作業時間を計測する。たとえば、資料1頁作るのに何分かかっているか、そのうち「資料を探している時間」「資料を読んでいる時間」「数字を入力している時間」「グラフを作っている時間」などに分けてそれぞれ何分かを計り、何に時間がかかっているか、どう削っていけばいいか考える。
  • 何か資料など作るときにはアウトプットのイメージをもつ。完成形のイメージなく作り始めてしまっては、情報収集の際に最終的には不要になる情報を時間をかけて集めてしまうことになる。分析資料のときは「ブランク資料」、文章のときは目次かな?

 

これは個人の作業に取り入れられることですが、組織であれば会議とか研修とかで取り入れられたらいいだろうなーと思う事例がたくさんあります。

この本は管理職に読んで欲しい。

下っ端が読んでも意味ないってことはないけど、読んだら自分の会社に絶望して辞めたくなりそう。

 

本との出会いのタイミング

とは言え、もしもまだ働いていた2016年出版当時に読んでいたら、もう少し働き方が変わっていたかも知れない…と思われたりもします。

とにかく、力強くて前向きです。

『第5章 人材を諦めない組織へ』では、「戦力外中高年」を諦めずに育成していくことが説かれています。もちろん、組織の生産性を向上するためには放置しているのは得策ではない、という視点なのですが、だからと言って「コマとして最大限使ってやる」みたいな悪意はまったくなくて、人間に対する愛を底はかとなく感じるんですよね。

この章を読んでいて、働かないおじさんたちのことを思い出しました。

 

うーん、やっぱり大きな組織で働いて悶々としている若い人たちにも読んで欲しいです。

こんなに前向きな考え方もあるのかと、何かしら刺さる部分はあるのではないかと思います。