ずーっと探し求めていた答えがここにあった…!『採用基準』

伊賀泰代『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』(ダイヤモンド社)を読みました。

タイトルにある”地頭より論理的思考力より大切なもの”=”リーダーシップ”についての本でした。

 

 リーダーシップはグループの一人だけが持っていればよいものではない

リーダーというと、浅はかな私のイメージでは”長”でした。

班長、委員長、会長、係長課長部長社長…組織やグループのまとめ役のイメージ。ですのでリーダーシップはというと、人々をまとめる素質・能力と言ったところでしょうか。

でも、間違っていました。

本書を読んでみてリーダーシップとは、「何か解決すべき問題・課題が発生したときに主体的に周囲を巻き込んで解決に導いていく姿勢・力」なのかなと理解しました。

 

一人のカリスマリーダーがいて、多くのフォロワーが付き従っていく、のではなくて、チーム全員がリーダーシップを持って主体的に問題解決に取り組むのが筆者の働いていたマッキンゼー・アンド・カンパニーの仕事の仕方だそうです。

「船頭多くて船山に登る」こともなく、「(優秀な人が)みんなでやるより一人でやった方が早いわー」ということもなく、チーム全員で取り組むことによって一人でやるよりもより大きな成果が出せるって、素晴らしいです。

 

私が長年探し求めていた答えはリーダーシップだった!

この本を読んで大変感銘を受けたのは、「私が長年探し求めてきた答えは、リーダーシップだったのか…!」と腹落ちしたからです。

 

「他人は変えられない、変えられるのは自分だけ」という言葉がありますよね。

この言葉ってほんとに真理だなと思います。人に何か口出し、指摘、お説教などなどしても、よっぽど素直な人じゃない限り、すぐに変わるなんてことはありません。というかむしろ自分の力で他人を変えられる、なんて考えは傲慢です。

でも若い頃は、この言葉にどこか「他人への諦め」みたいなものを感じて納得がいかなかったんです。社会にもまれて大人になるにつけ、いやいや真理だわと思うようになっていったんですが、それでもまだ何かもやもやが残るというか。

 

「ニーバーの祈り」を知っていますか。

「神様、変えられないものを受け容れる寛容さを、変えられるものを変える勇気を、そして変えられるものと変えられないものを見分ける知恵をください」

ってやつです。

この言葉大好きで、座右の銘にしたいくらいなんですが、今回この本を読んだことによって、「変えられるものと変えられないもの」のジャッジラインが、「ほぼほぼ何も変えられないわー」と諦めていたところから、もう少し「変えられるかも!」寄りに移動しました。

 

自分が解決すべき問題がある、と思ったときに、リーダーシップを発揮して変えていくことができるんだ、という勇気をもらいました。

 

リーダーシップは後天的に習得可能である

筆者は、リーダーシップは持って生まれたものではなく、鍛えることができるスキルだと言っています。これも勇気の出ることですね。

マッキンゼー流リーダーシップの学び方」も大変参考になりました。

基本動作として紹介されているのは「バリューを出す」「ポジションをとる」「自分の仕事のリーダーは自分」「ホワイトボードの前に立つ」の4つが紹介されていますが、中でも私の心に突き刺さったのは、「バリューを出す」と「ポジションをとる」です。

 

「バリューを出す」とは、「何らかの成果(付加価値)を生む」ということです。

例えば「会議で発言ゼロの人はバリューゼロ」です。

どんな会議であれ、話を聞くだけでひとことも話さなければ、その人がその会議にいてもいなくても、会議の結論、すなわち成果物は一切変わりません。つまり、その人の出した付加価値はゼロということになります。(中略)

マッキンゼーは学校ではないので、会議に参加して「今日は勉強になった」などと満足していることは、あってはならないことなのです。

「今日は勉強になりました」って、言いがちです…。相手に何の価値を提供できたか、という視点を常に忘れないようにしたいものです。

 

また、「ポジションをとる」とは、「あなたの意見は何か」、「あなたが意思決定者だとしたら、どう決断するのか」態度をはっきりさせるということです。

「常にポジションを取り、結論を明確にしながら、その結論に対して寄せられる異議やフィードバックを取り込んで、結論を継続的に改善していく」やり方のほうが、現実的な場合もあるのです。

さらに重要なことは、目の前の案件について、「どこまで詰めたら決断すべきなのか」(中略)を、意識的に考えておくことです。詳細が完璧に詰まれば実行するなどと言っていては、多くの場合、適切な時期に何かを始めることはできません。結果として「永久に検討しているが、何も決めない組織」になってしまいます。

 限られた時間の中で物事を決断し実行するためには、「詳細が完璧に詰まる」なんてことはないんですね。結論に関係のない瑣末なことへの指摘ばっかりで、結局何がしたかったんだろっていう会議、よくあったあった…(遠い目)。

そしてどこまで調べても調べても、「こういう見方もあればああいう見方もありますよね」みたいな一般論しか言えず、結論が出せなかった自分にはすごく耳が痛いです。

 

めちゃめちゃ厳しい世界。

でもこんな環境で成長できたら、なんと素晴らしいことでしょう。

マッキンゼー卒業者の方々は各方面で活躍されている方が多い*1ですが、こういった組織で育てられたというか鍛えられたことによって、自分の能力を最大限発揮して社会の課題を解決するビジネスをしていこうというマインド、実際に解決できるだけのスキルを身につけていったんだなということがよく分かります。

 

余談

あ、私がそもそもこの本を読もうと思ったのは、著者の伊賀さんが別名義でやられているブログやVoicyの大ファンで、本名で出している本も読んでみようと思ったのがきっかけでした。

そういう意味では、本書の最初の方でご本人の経歴が語られているところで、へー!そうだったのかーと知れてファン心理的には満たされました。

*1:私が存じ上げているのは、この本の著者の伊賀泰代さんのほか安宅和人さん、勝間和代さん、川鍋一朗さん、高島宏平さん、瀧本哲史さん、南場智子さんくらいですがまだまだたくさんいらっしゃる。