スマホと私の距離の取り方〜『スマホ脳』を読んで

アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)を読みました。

日本語版は2020年11月発行。

本はできるだけ図書館で借りますが、この本に関しては何年後かに読むより今読む方が良いだろうと思い(図書館で借りようとするといつのことになるのやら…という感じなので)、メルカリで購入しました。

 

筆者アンデシュ・ハンセンは、スウェーデン精神科医です。

人類の進化の過程、脳の仕組みから、スマホが人の心を奪ってやまない仕組みを解き明かしています。

 

脳は人類が生き残りやすいようにできている

人類の長い長い歴史の中で、スマホがあって当たり前の生活をしているのはほんの一瞬です。

20万年前に人類の祖先がアフリカに発生して以来、ほとんどの期間人類は狩猟採集民として生きてきました。

 

危険と隣り合わせの生活の中で人類が生き延びていけるように、脳には次のような特性があるそうです。

 

・脳は新しいもの好き

←周囲の情報をより深く知ることが生存の可能性を高めるため

・集中しているときより注意力散漫なときの方が脳にとっては好ましい

←集中を分散させて現れるすべてのものに素早く対応できる方が生存の可能性を高めるため

・ネガティブな感情はポジティブな感情に勝る

←危険な世界では楽観的でいるより悲観的でいた方が危機に対処でき生存の可能性を高めるため

 

など。

私がADHD系でHSP系で抑うつ系なのは、脳が生存に有利に進化してきた結果とも言える…?

 

というのはさておき、スマホがこれらの脳の特性にぴったりフィットした(新しい情報をどんどんくれて、注意力散漫にさせる仕掛け(広告)がたくさんあり、ネガティブなニュースばかりで煽ってきたり(これはスマホに限らないけど)、SNSでなかなかいいねをもらえなかったり、他人の生活を羨んだりしてネガティブな気持ちや不安をかき立てられる)ことによって、私たちがスマホを手放せなくなっているんですね。

 

進化の過程と脳の仕組み、という点では、こちらの本の内容と重なる部分もありました。

こちらは脳の癖を知って「意思力」を鍛えるためのプログラムが載っていてオススメです。

 

ドーパミンをどんどん放出させるスマホという存在

 

あなたの祖先が、たまにしか実のならない木の前に立っている姿を思い浮かべてほしい。実がなっているかどうかは地上からはわからないので、木に登らなくてはいけない。登ってみたら何もなかったら、別の木にも登って探すことが大事だ。ハズレを引いてもあきらめない人は、そのうちに高カロリーの果実というごほうびをもらえる。それで生き延びる確率も高まる。

ここに出てくる人類が、確実に実がなっている木にしか登りたくなーい、という傲慢な態度であれば、早晩エサにありつけずに死んでしまいます。

エサ(報酬)があるかないか分からないけれども、もしかしたらエサ(報酬)がある「かもしれない」から行動しよう!という思考回路が生き延びるためには重要で、その命令を出すのがドーパミンなんですね。

 

スマホドーパミンをどんどん放出させる存在。

次々に刺激的な情報を与えてくるために、脳からはドーパミンが放出され続ける=エサ(報酬)がある「かもしれないから」もっともっとスクロールしなきゃ!次のページをクリックしなきゃ!と行動させます。

でもね、ドーパミンは「快楽を与える報酬物質ではなく、何に集中すべきかを私たちに伝える存在」です。

スマホの場合、「もっともっと」と「集中して」と行動を重ねたところで報酬は手に入らず、それでもドーパミンは出続けてエンドレスに手が止められない、となるんですね…。

怖い。

 

 スマホが近くに「ある」だけで

びっくりなのは、スマホを使っているときだけでなく、サイレントモードにして近くに「ある」だけでも集中力が削がれる、という実験結果が出ていることです。

大学生500人の記憶力と集中力を調査すると、スマホを教室の外に置いた学生の方が、サイレントモードにしてポケットにしまった学生よりも良い結果が出た。学生自身はスマホの存在に影響を受けているとは思ってもいないのに、結果が事実を物語っている。ポケットに入っているだけで集中力が阻害されるのだ。

触っているときだけでなく、ポケットに入れているだけでも影響しているなんて…怖い怖い!

近くにあるスマホを「無視する」だけでも、脳にとってはエネルギーを使う行為だそうです。

 

集中したいときは、スマホの存在を感じられないくらい遠い遠い場所に隔離しなきゃならないですね。

 

 設定した時間まで絶対に開けられない、っていう箱もありますよね。

 

うつになる仕組み

ちなみに、筆者は精神科医なのでうつに関する記述もそこそこ紙幅を割いています。

うつ症状は長期のストレスフルな時期の後に現れることが多いんですが、いわく

強いストレスを感じるということはつまり、危険がそこら中にある。脳はそう解釈する。だから、頭から毛布をかぶって隠れていろ、と脳が命令するのだ。(中略)脳は私たちの「気分」を使って、危険いっぱいの環境から私たちを遠ざけようとする。ひどく気分を落ち込ませることで、引きこもらせるのだ。

なるほど…脳が私たちの身体のために良かれと思って、うつ状態にしてくれているというわけですね。

 

スマホとの距離感をコントロールしよう

この本を読んで、私がスマホと適切な距離感を保つために取り入れた取り組みは以下です。

  • スクリーンタイムを設定する。(全てのアプリで1日2時間)
  • 通知は必要最低限に。(夫からのLINE以外ほぼ全て切りました。バッジも。)
  • 寝室にスマホを持ち込まない。(これまでは寝室で寝る前にYouTubeを観ながらヨガをしていましたが辞めました。)
  • SNSは本当にフォローしたいごく少人数に限る。(Facebookは友達を辞めなくてもフォローだけ解除できます。インスタもTwitterも、見ていて気持ちが明るくなったり勉強になったりする方だけにしぼって。)
  • できるだけ手元に置かない。近くにあると無意識に手にとっちゃうので。

 

あと、ストレスや不安を解消したり、集中力を高めたりするのに、運動が効果的であると力説されています。(さすがお医者さん)

健康維持のための運動の大切さについては色んな形で実証されていますよね。

私も心拍数が軽く上がるくらいのウォーキング(早歩き)を日課にしています。

 

 

結局この本にも「ネガティブな情報」でもって不安な気持ちにさせられてる?という一面があるような気もしつつ…。

スマホに時間や集中力を奪われている感」は年々増していたのは事実ですので、できる対策はとって、スマホとの適切な距離を保ちたいものです。